アリックスパートナーズ、「2024年 欧州・中東の消費者トレンド予測」を発表

06 2月 2024

20242月6日】 グローバル・コンサルティング・ファームのアリックスパートナーズ(本社:米国ニューヨーク、日本:東京都千代田区、代表:植地卓郎、以下、当社)は、「2024年 欧州・中東の消費者トレンド予測」(以下、本レポート)を発表いたしました。

  • 2024年には37%の消費者が全体の支出を減らす予定と回答しており、企業は価格と品質が見合う、消費者が価値を感じる製品やサービスを提供し、プロモーションや会員向けの施策を展開する必要がある
  • 年齢が若いほど、ライフスタイルや消費習慣が経済状況に影響を受けることを避けたいと考えている。65歳以上のおよそ半数が支出を減らすと回答しているのに対し、18~24歳の層では支出を増やす、減らすの回答がそれぞれ4分の1を占めた
  • 全体の3分の2以上の消費者が購買に関わるデジタル・テクノロジーをすでに利用しているか、利用を希望している。また、バーチャル試着室や無人店舗といった新しいテクノロジーに対しても、未経験者のおよそ3割は利用に前向き
  • オンラインでショッピングをする消費者は、「利便性」と「商品の品揃え」を重視する一方、店舗でショッピングをする消費者が重視するのは、「商品の品質」と「コスト」


2024
 欧州・中東の消費者トレンドに関する調査概要
時期: 2023年10月~11月
実施: アリックスパートナーズ
対象: 英国、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の消費者1万人超
内容: 2024年の欧州・中東の消費者の消費意欲や嗜好、購買習慣やチャネルについて

アリックスパートナーズでは、欧州・中東の消費者トレンドを、①消費意欲、②購買チャネルと情報収集、③デジタルの3つの側面から予測しています。

1. 消費意欲

財政逼迫と経済不安を背景として、全消費者の37%が2024年の消費支出を2023年よりも減らすと回答し、増やすとした消費者は17%に留まりました。所得別では、低所得層では41%が支出を減らし、わずか16%が支出を増やすと回答しています。一方、高所得者層は、支出を増やす(26%)、減らす(24%)の回答がそれぞれ4分の1で、インフレ等に大きく影響されないことが伺えます。

2024年の小売、消費財、レジャーへの支出計画 (所得層別)



国ごとの支出予測をみると、現実的で価格に敏感な欧州の消費者は、ディスカウント・レーベルに目を向けています。英国では、低・中・高所得者の半数以上が、格安スーパーやディスカウントショップで定期的に買い物をしており、ファッションの分野でも、手頃な価格のマス・マーケット・ブランドが人気の最前線にあります。他の欧州諸国でも同様の傾向が見られ、価格への懸念を和らげるために、企業はあらゆる分野で、消費者にお買い得と感じさせる魅力的なプロモーションや特典に目を向けることが重要です。このようなマーケティング戦略は、消費者が掘り出し物を見つけることを楽しみ、贅沢をするよりも合理的に消費することに抵抗のない消費者の獲得につながります。

食料品の支出削減をする方法のトップ5 (市場別)



カテゴリー別では、消費者は「非食品分野」で消費支出を減らすことを見込んでいます。支出を維持する回答が最も高かったのは「食料品業界」で、2023年と比較して支出意欲が増加する唯一のカテゴリーとなりました。

2024年の小売、消費財分野への支出計画 (カテゴリー別)



年齢も支出削減のトレンドに影響を与える指標です。年齢が若いほど、ライフスタイルや消費習慣が経済状況によって影響を受けることを避けたいと考える傾向にあります。本調査では、65歳以上の約半数(46%)が支出を減らすと回答しているのに対し、18~24歳の層ではおよそ4分の1がそれぞれ支出を増やす(24%)、減らす(27%)と回答しました

2024年の小売、消費財業界の支出計画 (年齢別)



2. オンラインと店舗、チャネルとコミュニケーション

購買時に好まれるチャネルやコミュニケーションは、年齢によっても異なります。18歳~64歳の消費者の70%近くが販促情報をオンラインで受け取ることを好む一方、65歳以上の47%は印刷物を好んでいます。また、18~34歳の50%以上がデジタル端末での注文を好むのに対し、55歳以上の回答は21%まで減少し、およそ8割は従来のカウンターでの注文を好んでいます。年齢層の好みは存在しますが、デジタルが果たす役割は重要です。オムニチャネルとデジタルを活用したコミュニケーションがますますスタンダードになりつつあり、全体の40%以上がマス向けのプロモーションではなく、特定の属性に合わせた内容を受け取ることを望んでいます。この傾向は、とりわけ高所得者や若年層においてより顕著となっています。

店舗とオンラインそれぞれの買い物の課題を把握すると、店舗よりもオンラインを好む消費者の理由は、「利便性」と「商品の品揃え」という2つの重要なテーマが挙げられます。具体的には、「店舗に出向くのは自宅で買い物をするよりも不便」、「特定の商品やサイズの在庫が少ない」、「品揃えが少ない」 という理由です。なお、オンライン・ショッピングで最も人気のあるカテゴリーは「衣料品」と「家電製品」で、ネットでの品揃やサイズの選択肢の幅などが店舗より豊富な場合が多いためとなっています。

店舗における購入の課題



店舗でのショッピングを好む消費者が最も重視するのは、「商品の品質」と「コスト」です。店舗での購入を好む層の55%は、「購入前に商品を見たり触ったりする必要がある」ことを挙げ、次いて、35%が「配送料が高すぎる」、32%は「返品に費用と手間がかかる」と回答し、オンライン注文を避けています。

オンラインにおける購入の課題

3. デジタル・テクノロジーの活用

クリック・アンド・コレクト、デジタル決済、宅配サービス、小売業者のモバイルアプリなどは、全体の3分の2以上の消費者がすでに利用しているか、利用を希望しています。また、ARを利用したバーチャル試着室(9%)や無人店舗の利用(10%)は現時点では少数でありますが、未経験者のおよそ3割(29%:バーチャル試着室、28%:無人店舗)は、これらの新しいテクノロジーを利用することに前向きです。これは、新しいテクノロジーに対して消費者の好奇心や体験意欲が旺盛であることを示しており、企業にとっては重要なチャンスとなります。

消費者が利用しているテクノロジーの使用種類



アリックスパートナーズのパートナー&マネージングディレクターで、日本の消費財・小売りプラクティス・リーダーである服部浄児は次のように述べています。「2024年以降もインフレの影響が続くと、消費者は支出を引き締めコスト管理をより意識するようになります。特に中堅のプレーヤーは消費の変化に直接的な影響を受け、市場におけるポジショニングについて重要な戦略的決定を下す必要があるでしょう。業界内では事業成長や生き残りのためにカテゴリーを越えた競争が起きることが見込まれ、企業はコスト削減、運転資本の最適化、M&Aなどの競争力の向上や差別化のための打ち手を講じると見ています。消費トレンドの変化を正確に捉えて事業計画や事業のオペレーションを調整できる企業こそが、最良のポジションを築き、消費が回復するまでの不安定な事業環境を切り抜けられるでしょう。」

本レポートの全文(英語)は、こちらからご覧いただけます。