連載「CEOの綱渡りな旅」では、技術革新、多様なステークホルダーからのプレッシャー、マクロの経営環境など、CEOが直面する課題について短い記事を書き連ねていく。

第4回は、「戦略を忘れる」

IBMのCEOに就任したルイス・ガースナー氏は次のように語った。

「IBMに今必要なのはビジョンだ」

当時のIBMに必要だったのは、倒産の危機に瀕していた組織に危機感をもたらし、実行に集中させることだった。彼は、巨大産業の運命を逆転させたと広く信じられている。

ガースナー氏が引退してからの20年間、変化のスピードは加速する一方だった。テクノロジーの急激な進歩、世界秩序の崩壊、異常気象、あるいはパンデミックなど、物事がこれほど速く変化する時代においては、緻密に練られた5カ年戦略は、的を絞った迅速な実行に勝ることはないだろう。入念な計画は必要だが、それが行動できない言い訳になったりしてはならない。

アリックスパートナーズが毎年発表している「ディスラプション・インデックス」では、成長と収益の両方を伸ばしている企業に注目している。このグループは、テクノロジーや人材への投資を増やし、分析や計画よりも大胆な行動に重点を置いている。

消費者行動の変化についていけなかったり、質の高い人材が集まらなくなったり、サプライチェーンの混乱が危機に発展したりと、遅れをとれば、企業の将来はたちまち危うくなる。

成長を実現しているリーダーは、現状に満足することなく、さらに良い業績を上げようとする決意を示す。そのためには、以下のようなことに集中する必要がある。同僚のデビットと一緒にハーバード・ビジネス・レビューの記事で詳細を説明している。

  • 適切な人材を配置する
  • 適切なテクノロジーに投資する
  • プロセスとオペレーションの強化と合理化をする
  • 状況の変化に応じて迅速かつ自信を持って行動できるようにシナリオを描く

しかし、最も重要な要素のひとつは、リーダーシップだ。集中力と継続力を発揮するリーダーは「ターンアラウンド・マインドセット」と呼ぶものを持っている。詳しくは次の記事で説明したい。

第1回:「デジタル投資に取り残されていると不安を感じた時に」
第2回:「声の大きい批判者にアジェンダを決めさせない」
第3回:「フリーマネーからオペレーショナル・エクセレンスへ」