アリックスパートナーズ、2020年グローバル自動車業界アウトルックを発表

23 6月 2020

コロナ禍により自動車生産台数は向こう3年間で最大3600万台減少すると予想される中、自動車業界は現時点までに新たな債務負担を合計720億ドルも抱えるに至っています。これらは業界が歴史的な大変革を遂げなければならないところで突然直面することになった難局です。今後、各企業は損益分岐点を「迅速に下げ」、資金配分を「極めて細かく選別」していく必要があります。

【2020年6月15日】 グローバル・コンサルティング・ファームのアリックスパートナーズは、世界の自動車業界の展望についてまとめたレポート「アリックスパートナーズ・グローバル・オートモーティブ・アウトルック:不確実性の克服(The AlixPartners Global Automotive Outlook: Mastering Uncertainty)」(以下、本レポート)を発表いたしました。

世界の自動車業界は既に市場が軟化傾向にあった中、COVID-19危機に直面しました。その結果、業界全体の収益が大きく落ち込んだことを受け、各社とも短期的に抜本的なコスト削減を迫られています。さらに、ロックダウン、経済再開の遅れ、消費者信頼と雇用の落ち込みにより、今年から2022年までの期間に自動車販売台数は累計で最大3,600万台減少(2019年比)する見込みです。加えて、今年3月上旬以降の新たな債務が膨らんでおり、合計720億ドルに上っています。アリックスパートナーズでは、今年の世界の自動車販売台数は世界で7,050万台と予想しています。

一方、自動車業界の供給サイドをみると、新型コロナ危機以前の2019年にアリックスパートナーズが行った分析では、財務が「強固」なサプライヤーは、業界全体収益のわずか6%を占めるにとどまることがわかりました。収益の50%を占めるサプライヤーは財務的に「厳しい」(43%)、あるいは「破綻寸前」(7%)という結果でした。

アリックスパートナーズのマネージング・ディレクター兼自動車・製造業プラクティス・グローバル共同リーダーであるマーク・ウェイクフィールドは次のようにコメントしています。「急激な売上の落ち込みによって、収支の大幅な悪化が生じ、さらに負債残高も増加しているため、各社は損益分岐点を下げる必要性に迫られています。新型コロナによる不確実性を考慮して、将来に備えるためには、各社は損益分岐点をリーマンショック当時の水準まで引き下げる必要があります。それは、世界の自動車生産が6,500万台にとどまり、米国でもせいぜい約1,400万台という水準を想定し、それでも利益を獲得できる経営体質を構築することを意味します」。

本レポートでは、今回は自動車業界の財務状況がリーマンショック当時よりもさらに悪い状態にあるときに、新型コロナ危機に直面したということも明らかになりました。具体的には、利益率と資本効率を測る指標であるROCEをみると、世界の自動車メーカーは2015年から2019年で平均47%、サプライヤーでは36%低下しています。さらに、2015年から今年第1四半期の期間で、負債総額は、自動車メーカーでは36%、サプライヤーでは33%増加しています。新型コロナ危機の3月初旬から5月22日の間で、全世界の自動車メーカーとサプライヤー50社合計で721億ドルの新たな債務を抱えることになっています。

アリックスパートナーズのマネージング・ディレクター兼欧州・EMEAの会長であり数十年にわたる自動車業界の専門家であるステファノ・アヴェルサは次のようにコメントしています。「新型コロナ危機の影響で、欧州市場全体が1年間で消失したかのようです。明らかに、自動車業界、サプライヤー、モビリティプレーヤー、その他業界に関連するあらゆる企業は、資源配分の決定について極めて細かな選択を迫られるでしょう。つまり、あらゆる投資や支出計画を、手元資金と収益の両面から綿密かつ論理的に見直すことになります。難局を切り抜けるためには、企業に有益となる政府支援策を最大限活用しながら、決断を下す必要があります」。

アリックスパートナーズのマネージング・ディレクター兼自動車・製造業プラクティス・東京リーダーである川口幸一は次のように述べています。「新型コロナの影響がしばらく継続すると思われる中、短期的には企業の収益力が相当に傷むため、自動車事業をノンコアと位置付ける企業グループによる事業売却(カーブアウト)案件が増えると考えています。その場合の受け皿としては、PEファンドが有力であり、業界再編を主導するのではないかとみています。第一は、事業会社自身が収益性・財務基盤の悪化に苦戦しているため、PMIに経営資源を割く余裕がないこと。第二は、投資の前提として、買収対象会社の建て直し、すなわち固定費の抜本的な削減が不可欠となるため、PMIの難易度が、平時よりも高まるであろうことが挙げられます」。

今年のアリックスパートナーズのグローバル自動車販売見通しでは、国によって回復スピードにばらつきが多いことを指摘しています。具体的には、ロックダウンと経済再開が最初に行われた中国は2300万台と回復が最も早く、次いで米国は1360万台、そして一部最も深刻な新型コロナの影響を受けたと考えられていた欧州は1141万台にとどまる見通しです。全体として、2025年以降までグローバルベースでの売上高が2017年の水準に戻ることはないとみています。

本レポートで論じたその他の主なポイントは以下の通りです。
新型コロナ以前は、自動運転向け投資は2020年から2025年までの累計で790億ドルに達すると見込まれていましたが、今回の危機とその他の分野での後退で、その額が大幅に削減される可能性が高まっています。
2019年に公表された自動車関連M&Aの約40%(130億ドル相当)は、「CASE」(「Connected:コネクティッド化」「Autonomous:自動運転化」「Shared/Service:シェア/サービス化」「Electric:電動化」)分野で実施されており、案件数は2018年の423案件から32%増の560案件に達しました。
欧州の自動車業界および規制当局は正念場を迎えています。アリックスパートナーズは、二酸化炭素排出量に関する現在のEU自動車業界の目標と、2020年末までの業界予想との間に21%の差があるとみています。それには政治的な解決策が必要になるかもしれません。何も変わらなければ、企業は2021年に100~140億ユーロの罰金に直面するでしょう。
以上


アリックスパートナーズ・グローバル自動車業界アウトルックについて
世界の自動車業界に関する公表資料および独自に実施するオンラインアンケート(18歳以上の運転免許証保持者対象)の結果などをもとに数か月に及ぶ調査・分析結果をまとめたもの。

アリックスパートナーズについて
1981年設立。ニューヨークに本社を構える結果重視型のグローバルコンサルティング会社。企業再生や企業が直面する緊急性が高く複雑な課題の解決に特化する。民間企業、法律事務所、投資銀行、プライベートエクイティなど多岐にわたるクライアントを持つ。世界20都市に事務所を展開。日本オフィス設立は2005年。www.alixpartners.com. 


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